博士課程の高津邦夫君の論文が Biological Journal of Linnean Society 誌に受理されました。捕食者種の共食いが餌種の防御形質の進化にどう関与するのか、エゾサンショウウオとエゾアカガエルの関係で調べた研究です。

強い肉食性の捕食者種において共食いはよくある現象です。捕食者種の共食いは自種の個体数を減らすことで下位の餌種に対する捕食圧を弱めると信じられてきました。昨年、私たちは従来の仮説に反する研究成果を報告しました。エゾサンショウウオ幼生では共食いによって数が減少するが共食いした個体が劇的に大型化するため、大きな餌種(エゾアカガエルのオタマジャクシ)に対しては、共食いが生じない場合よりも強い捕食圧がもたらされるというものです(Takatsu & Kishida 2015)。この研究成果から高津君は「オタマジャクシの防御形質を進化・維持する原動力としてサンショウウオの共食いが働いているのではないか?」と考え、その仮説を検証したのが今回の研究です。捕食者種の共食いが被食者種の進化に与える影響について調べた数少ない研究です。

納得のいく論文が書きあがるまで2年を要しましたが、たいへん勉強になりました。