水族館の卓越した繁殖技術のおかげで成しえた研究の成果が,Hydrobiologia誌に掲載されました

エゾアカガエルのオタマジャクシは,国内外来種のアズマヒキガエルの孵化直後の胚や幼生を食うと中毒死(ブフォトキシン中毒)することがわかっています.未受精卵の段階で毒があることが確かめられていることから,アズマヒキガエルは母親が体内で卵を作り出す際に毒物質(ブフォトキシン)も蓄積すると考えられます.では,アズマヒキガエルの毒物質は,親が生産しているのでしょうか? それとも毒物質を含む餌を食べることで体内に毒物質を蓄積するのでしょうか? 世界淡水魚園水族館 さんの協力でこの疑問に取り組むことができました.世界淡水魚園水族館の飼育員・田上正隆さんは両生類の繁殖で卓越した技術をお持ちです.同水族館には,卵から成体になるまで人工飼料やコオロギなどのブフォトキシンを含まない餌のみを与えて育てたアズマヒキガエルがいます. 今回,田上さんにお願いして,この飼育下ヒキガエルを繁殖させてもらいました.私たちが,飼育下ヒキガエルの孵化胚をエゾアカガエルのオタマジャクシに食べさせたところ,野生ヒキガエルの孵化胚と同じく強い致死的効果があることが確かめられました. これは,アズマヒキガエルがブフォトキシンを生合成していることを示しています.田上さんに感謝です. 

Okamiya H., Tagami M., Crossland M. & Kishida O. (2021) Are toxic effects of alien species affected by their prey? Evaluation by bioassay with captive-bred toad embryos and a vulnerable predator. Hydrobiologia (In press)